絵本・児童書

衝撃の内容?!絵本「チリンのすず」(やなせたかし作)のメッセージ

こんにちは、たっちゃんです。

「チリンのすず」という絵本を読むと、内容が衝撃的すぎて、どう子どもに伝えていけばよいのか困りませんか?笑

たっちゃん

チリンのすずは、何を伝えたい絵本なんだろう?

不幸を知ることを通して、本当の幸せについて考えることができる絵本だよ!

えりちゃん

チリンのすずは、大人が伝えたいメッセージを念頭に置いて、子どもに読み聞かせたり、紹介することで、より一層の深みを感じることができる絵本です。

作者は、アンパンマンで有名な「やなせたかし」さん。

最近では、小学校の国語の教科書に伝記が載るほど、日本国内、そして世界中で有名な方です。

ただ、内容があまりにも衝撃的な内容で、どう解釈して子どもに伝えていけばよいか、悩むところも多いと思いはず…

そこで、個人的にチリンのすずについて深掘りし、私なりの解釈を紹介しています。

この記事を読むと、チリンのすずについての理解が深まり、一冊の絵本からより多くのことを学ぶことができるはずです♪

今回は、チリンのすずの内容について、詳しく解説します。

「チリンのすず」が絵本界で有名な理由

チリンのすずが、ここまで話題にあがる理由は以下の通りだと考えます。

チリンのすずが有名な理由

衝撃的な内容
やなせたかしさんの作品
アンパンマンとのギャップ

※以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください!

衝撃的な内容

この作品は、ハッピーエンドではありません。

3匹の登場人物のうち、2匹が死んでしまいます。

そして、残った1匹も、決して幸せとは言えない生き方を続けることになります。

子ども向けの絵本の中では、珍しい内容だね(^_^;)

えりちゃん

それだけに、考えさせられることが多いのですが、子どもがどんな風にこの物語を受け取るのか、気になる人も多いのでは??

やなせたかしさんの作品

作者を見て、誰もが驚くと思います。

この作品の作者は、アンパンマンで有名な「やなせたかし」さんです。

たっちゃん

やなせたかしさんは、アンパンマン以外の作品も残していたんだね!

ちなみにアンパンマンのアニメがテレビで放送開始されたのは、なんとやなせたかしさんが69歳のとき。

チリンのすずは、1978年の出版です。アンパンマン以前にも、多くの魅力的な作品を生み出していたんですね♪

ちなみにアンパンマンについては、以下の記事でも解説しているので、ぜひ読んでみてください♪

アンパンマンって 悪影響?

2023/6/2    

こんにちは、たっちゃんです。 我が家の子どもたちは、アンパンマンが大好きです♪ 今回は、子どもたちが大好きなアンパンマンが、大人も一緒に楽しむことができる質の高いコンテンツであることについて解説します ...

アンパンマンとのギャップ

やなせたかしさんといえば、アンパンマン。

優しそうな笑顔。

アンパンマンが生み出す世界は、どの作品もハッピーエンド

子ども向けに描かれている作品なので、見ていて幸せな気持ちになれるものばかりです。

多くの人の心の中に、そのような意識があるからこそ、「チリンのすず」との大きなギャップを感じるのだと思います。

「チリンのすず」の内容についての考察

チリンのすずの内容をわかりやすく一文で表現すると、

「チリンが、おかあさんのかたきのウォーを殺したことで、大切なものを失う話」です。

以下のように、「文学を読む観点」(筑波大学附属小学校・白石範孝)で整理してみました。

観点詳細
いつ(時)チリンが生まれてからの3年間
どこで(場所)チリンの住むまきば・ウォーが住むいわやま
どんな人物が(登場人物)子羊のチリン・チリンのおかあさん・狼のウォー
だれが中心(中心人物)チリン
対人物ウォー
語り手三人称 客観視点
どんなことが起こった(事件)①チリンのおかあさんが、ウォーに殺された
②チリンが、ウォーに弟子入りした
③チリンが、ウォーを殺した事件を受けて変わったことは?①チリンは、ウォーへの敵討ちを考える
②孤独なウォーは、誰かに必要とされることを喜んだ
③チリンは、産みの母親に加え、育ての父親をも失った
声に出して言いたい言葉・文チリンのすずでおもいだす このよのさびしさ またかなしみ
筆者作成

それぞれ、詳しく説明していきます!

いつ(時)

チリンは、春に生まれた子羊です。

生まれてすぐ、おかあさんは狼のウォーに殺されてしまいました。

それから3年間、チリンはウォーのもとで敵討ちのための修行を積みました。

たっちゃん

辛く苦しい3年間だったろうね…

その中でも、実は得るものがあったんだと思うよ!

えりちゃん

どこで(場所)

チリンは、まきばで生まれました。

ウォーは、おそろしい形のいわやまで暮らしています。

いわやまは、いかにもおそろしい形をしているよね(笑)

えりちゃん

どんな人物が(登場人物)

子羊のチリン:おかあさんをウォーに殺され、敵討ちのためウォーに弟子入りし、最終的にはウォーを殺してしまう。

チリンのおかあさん:チリンをおなかの下にかばって死んでしまう。

狼のウォー:孤独な狼。弟子にしたチリンに殺されてしまう。

うーん、、みんな寂しい思いをするんだね…

えりちゃん

だれが中心(中心人物)

チリン。

中心人物とは、物語の中で一番心が大きく変わった人のこと。

チリンのすずは、題名にもあるとおり、チリンの心の変化を中心に物語が進んでいきます。

対人物

ウォー。

中心人物に最も影響を与える登場人物のこと。

ウォーなくして、この物語は成立しません。対比こそが、より一層物語を引き立てることがわかります。

語り手

三人称 客観視点。

語り手とは、物語の進行役のこと。

「三人称」とは、登場人物ではない語り手が、三人称(「チリンは〜」「ウォーは」など)を用いて、物語の世界を語り、進行していくことです。

「客観視点」とは、語り手は登場人物とは切り離された存在で、チリンやウォーの内面に入り込むことなく物語を進行していきます。

チリンのすずは、「三人称 客観視点」なので、可愛らしい表紙のイラストとは裏腹に、どこか哀しげな雰囲気を醸しながら、淡々と物語が進行していきます。

どんなことが起こった(事件) → 事件を受けて変わったこと

①チリンのおかあさんが、ウォーに殺された → チリンは、ウォーへの敵討ちを考える

チリンのおかあさんは、チリンが谷底に落ちてもすぐにわかるように、チリンに鈴をつけていました。ウォーとのたたかいでは、チリンをお腹の下にかばって死にました。たっぷりの愛情を受けて育ったチリン。愛する母親を殺された悲しみはいかばかりか… そしてチリンの気持ちは、敵討ちに向かうのでした…

②チリンが、ウォーに弟子入りした → 孤独なウォーは、誰かに必要とされることを喜んだ

チリンがウォーに弟子入りすると、嫌われ者のウォーは、心の中がふわーっとあたたかくなったようです。ウォーは、これまで、誰かに必要とされた経験がありませんでした。ウォーの心が、ようやく温められ始めた瞬間でした。

③チリンが、ウォーを殺した → チリンは、産みの母親に加え、育ての父親をも失った

チリンは、大切なものを失いました(産みの母親・育ての父親)。激しく後悔するチリン。羊に戻ることもできず、ひっそりと生き続けています。一方、ウォーは、息子同然のチリンに殺されたにも関わらず、そのことを喜びました。ウォーにとってチリンと過ごした3年間は、かけがえのない時間だったのでしょう。

①〜③を踏まえると、この物語で喜びを得たのは、もしかしたらウォーだけなのかもしれません。

孤独なウォーを救ったチリンのような存在が、もっとも必要とされているように感じます。

声に出して言いたい言葉・文

「チリンのすずでおもいだす このよのさびしさ またかなしみ」

国語の大家、白石範孝先生は、「文学を楽しむということは、文学作品のある一節を口ずさめることではないか」と言われています。

この文章は、チリンのすずという物語を象徴する一文のように思われます。

「チリンのすず」で、伝えたいメッセージ

チリンのすずを子どもに読み聞かせる、もしくは紹介するにあたり、親が子に伝えたいメッセージについて考えました。

伝えたいメッセージ

孤独がいちばんの不幸
敵討ち(仕返し)をしても、幸せにはなれない
誰かを傷つけていては、幸せにはなれない

こういった教訓めいたことを、直接子どもに伝えても、きっと効果は薄いですよね(^_^;)

小さい子どもには意味がわからないだろうし、ある程度大きくなると白けちゃうかも…

えりちゃん

そこで絵本の出番です!

もちろん、絵本を読みながらメッセージを直接的に伝えるわけではありませんが、親がこのようなメッセージを念頭に置いた上、絵本を読み聞かせたり、紹介したりすることで、気持ちの伝わり方は大きく変わると思います。

孤独がいちばんの不幸

ウォーは、無差別にまきばを襲う、嫌われ者でした。しかし、チリンと出会うことで、誰かと関わることの喜びを味わうことができました。

ウォーを、このような孤独な環境に置いてしまう世の中の状況は、変えていかなければなりません。

孤独にならないための方法。孤独な人の心を温める方法。こういった問題を考えるきっかけになるのではないでしょうか。

敵討ち(仕返し)をしても、幸せにはなれない

母親の敵であるウォーを殺しても、チリンの心は晴れませんでした。

晴れないばかりか、大きな苦しみを背負って生き続けることになります。

失うものの大きさを感じます。

誰かを傷つけていては、幸せにはなれない

チリンとウォーは、まきばを襲うことを目的としていました。

健全な目的に向かって励むことができていれば、二人は幸せになれていたかもしれません。

「なんのために生まれて、何をして生きるのか?」 やなせさんの言葉が響きます。

まとめ:「チリンのすず」は、やなせたかしさんからのメッセージ

チリンのすずは、私たちがもつ先入観を壊し、新しい世界に導いてくれる良書です!

内容は、「チリンが、おかあさんのかたきのウォーを殺したことで、大切なものを失う話」なので、読後感は正直悪いのかもしれません(^_^;)

しかし、不幸を知ることで本当の幸せを知ることができるというメッセージを念頭に置いて子どもたちに伝えることで、この絵本の価値は何倍にも膨れ上がると思います。

チリンのすずを通して、やなせたかしさんから色々なことを教えられているような気がします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(絵本に対する見解は、あくまで個人の考えによるものです。)

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